無罪判決

2002年7月、あまりに痛ましい事件が起きた。愛知県豊川市でゲームセンターの駐車場の車から幼児が連れ去られ、殺害されてしまった。連日報道されている事であるから、読者の方もご存知であろう。名古屋地裁で行われた裁判においては、朝のワイドショーや新聞によれば証拠は皆無で、被告人の自白が焦点となっていたようである。結局、名古屋地裁は自白の信用性に疑いがあるとして、被告人を無罪とした。
ここでのテーマはこの事件や、真犯人は誰かという事ではない。一般に「自白」である。もし、証拠が皆無であるにもかかわらず、自白のみで裁判が行われていたのであれば、無罪は当然の判断であると、私は判決が出る前から考えていた。そもそも憲法にすら書いてある。第三十八條の 3 に「何人も、自己に不利益な唯一の證據が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない」(日本國憲法 - Wikisourceより) と明白に書いてある。
しかしながら、最近は改善されつつあるようだが、日本には前時代的な自白偏重の長い歴史がある。これと深く関わっているのが「代用監獄」(参考:代用刑事施設 - Wikipedia) など、容疑者にあまりに不利な拘留制度であろう。現在の世論がそうなっているように、私は被害者の人権も最大限守られるべきだと考える。と同時に、容疑者はあくまで容疑者なのである。「犯人」ではない。
http://www.toben.or.jp/news/daikan/ を参考に見てみよう。容疑者は、本来は、ある程度人権が配慮された拘置所に最大15日拘留され、取り調べを受けるはずである。しかし、実状は代用監獄において、23日間、場合によってはずっと長い間、非人間的な環境で拘留されることとなる。更に、弁護人とも自由に会えず、国選弁護人制度もない。等々。「冤罪の温床」としか言いようがない。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルも、代用監獄の廃止を勧告している (参考:http://www.nichibenren.or.jp/ja/committee/list/koukin.html)し、2005年6月にも、事務総長が「代用監獄は日本の人権史に残る汚点であり、ただちに廃止されなければならない」(http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=16から引用) としている。
代用監獄は今までも問題となってきた。しかし、代用監獄はまだまだ廃止されない | 行列のできない法律相談所? - 楽天ブログ を見る限りにおいては、その早期廃止は絶望的である。
件の判決から、こういった面にも注意を向けていただければと思っている。